hills パン工場
THURSDAY LIVE
1周年記念NIGHT
2004.3.18


読者の皆さんからご要望の多いhills パン工場ライヴのレポート。このコーナーでは、毎月、音楽ライターの斉田才が趣向を凝らしてライヴの模様をバッチリお届けしていきたいと思います! 現場で体感した方も、参加出来なかったというあなたも要チェック! 記念すべき第1回目は「hills パン工場 THURSDAY LIVE1周年記念NIGHT」のレポートです。

 大阪はミナミ、若者のファッション・トレンド地域として名高い堀江地区の一角に、“hills パン工場”というユニークな名前のカフェが誕生したのはちょうど2年前。カフェの地下に工房のようなパン製造設備を整え、そこから直送のパンを売り出した事から“パン工場”と名付けられた。普段は静かな環境のそのカフェの地下に続くドアの前に毎週木曜日だけ人だかりが出来るようになったのは、約1年前。実は、それが関西唯一のメジャー・レコード会社、GIZA studioが開いた直営のライヴ・ハウス“hills パン工場”だった。
 3月18日、そのライヴ・ハウス、hills パン工場が1周年を迎えるにあたり企画されたのが「hills パン工場1周年記念NIGHT」。メインで登場したのは、昨年の紅白歌合戦にも登場し、今や倉木麻衣と並びGIZA studioの“顔”とも言える愛内里菜。
 つい2ヶ月前の1月8日にも、年明け1発目のライヴを「お正月“RINA”NIGHT」と題してこの会場を興奮のるつぼに陥れたその歌姫が、早くも戻ってきた。
 もちろん、チケットは即完売。プラチナ・チケットを握り締めた、たった250名のファンだけが会場に入れたのだが、それでも場内は開演30分前には超満員。皆、今や遅しと愛内里菜の登場を待ちわびていた。
 午後7時半、メンバーが登場すると共に大歓声の中、さっそうと現れた愛内は「THURSDAY LIVE1周年、おめでとう!」と叫んでまず1曲。オープニング・ナンバーはレニー・クラヴィッツのロック・ナンバー「Are You Gonna Go My Way」。続いてボン・ジョヴィの「Bad Medicine」とハードなナンバーの連続で、会場は既に超アツアツ状態。思わず彼女自身が観客をクール・ダウンさせる一幕もあり、相変わらずしょっぱなから体力勝負のライヴ展開。このセットのメンバーは、THURSDAY LIVEのレギュラー・メンバー(山口“PON”正人(Dr)、大橋雅人(B)、岩井勇一郎(G)、大楠勇蔵(Key))にGARNET CROWの岡本仁志(G)が加わった布陣。いつもと違ったミュージシャン編成でライヴが体験出来るのもここならではの楽しみだ。
 そうこうする内に3曲目では早くもゲストの宇徳敬子が登場! 2人で歌うのはこれで5度目になるという両者だけにコーラスの息もぴったり。この日は、ユーリズミックスのポップなナンバーに始まり、懐かしいサイモン&ガーファンクルの「冬の散歩道」や、グロリア・エステファンのラテン・ポップなナンバー「1,2,3」まで(愛内曰く、グロリアの早口歌詞を歌うのがリハーサルでは大変だったが、本番が一番良かったとの事)バラエティ豊かに両者の歌唱力の上手さで魅了するナンバーが選ばれ、会場を沸かせていた。回を行うごとに変化していくカヴァー曲の数々は、今やTHURSDAY LIVEになくてはならない存在だ。
 また、この日はライブ中盤までに愛内自身もいつにも増してリラックス・ムードでMCを連発! ファンに伝えたい事は山程あるらしく、和気あいあいとしたムードの中、オーディエンスの質問にも丁寧に受け答えしているのが印象的だった。どんな大きな存在になっても無くならない、そんな気さくさも愛内里菜の人気の一因に違いない。
 さぁ、とんとんと小気味よく進んでライヴ中盤、ここで宇徳がステージを後にし、バンド・メンバーも入れ替わる。彼女自身のツアー・バンド、“LOVE-MOTION”のメンバー(亀井和俊(Dr)、浅井寛史(B)、綿貫正顕(G))を呼び込み、さらに今度はゲストにGARNET CROWの古井弘人(Key)とdbの車谷啓介(Per)も加わって、ここからは愛内里菜オン・ステージの開幕だ!「Deep Freeze」「Over Shine」とアップなナンバーを続けて、再度観客の魂に火を点けたかと思えば、さらに懐かしい「POWER OF WORDS」が、そして「Run up」「恋はスリル、ショック、サスペンス」「Ohh! Paradaise Taste!!」と続けば、会場が盛り上がらな訳がない。ステージ上で縦横無尽に歌を操る愛内と汗だくのボディ・ランゲージでそれに応えるオーディエンス。このライヴの熱狂と一体感は、まさに生もの。その場で体感しなければ得られない至福の瞬間が、今日も彼女のライヴには舞い降りた。
 という訳で、興奮のボルテージが上がりきったまま本編を終了させたライヴに観客が引き下がる訳もなく、怒濤の拍手で迎えたアンコール。
 笑顔、笑顔で登場した愛内は、再び宇徳を呼び込み、スターシップのカヴァーと自身の「Forever You〜永遠に君と〜」で感動的にライヴを締めくくった。
 のはずだったのだが、驚いた事にその先が待っていた。既にライヴの終わりを告げるBGMが流れ、メンバーが去って1人ステージの彼女は、BGMに流れていた4月リリースのニュー・シングル「Dream×Dream」をそのまま生アカペラで1コーラスだけ歌ったのだ。最後にファンにとって嬉しいハプニングは、愛内里菜からの感謝の贈り物。そして、そんなハプニングが当たり前のように起こる場所、それがhills パン工場なのだ。
 さらに、この日は当日限りの愛内里菜がリクエストした特製パンが販売されたり、超レアな日付入りポスターが現れたりと、その名の通りのパン工場ならではの仕掛けも面白い。
 愛内里菜のライヴ・パフォーマンスと共に大盛況の内に幕を閉じた“hills パン工場 THURSDAY LIVE 1周年記念NIGHT”。まだまだ、毎週木曜日、大阪北堀江の夜はヒート・アップしていきそうだ。(text:斉田才)