ZARD

New Single
「悲しいほど貴方が好き
/カラッといこう!」

2006.3.8 Release


 2006年、ZARD始動の第1弾、通算41枚目のシングル「悲しいほど貴方が好き/カラッといこう!」が3月8日にリリースされる。ZARDサウンドの王道であり、かつ革新性をも併せ持つシングル曲は、今年1年のZARDの活動を予感させる道標だ。

 音楽業界では毎年約800組のアーティストがデビューを飾るという。その内、1年以内に残っているのが1割の80組、さらに10年経って残っているのはさらにその内の1割、8組に満たないと言われている。それ程この業界で生き残っていくのは過酷であり、大ヒットを飛ばしているアーティストであったとしても、いつ何時ドロップ・アウトするかわからない危険性をはらんでいる事実は、誰もが知るところであろう。そんな栄枯盛衰の激しい音楽シーンにあってZARDは、自らの露出をいわゆる作品リリースのみで行いながら、数々のミリオンヒットを放ち、(周知のようにライヴ活動は一昨年、初めて実現!)これまで活動を続けて来る事が出来た希有なアーティストだ。その存続し続けられた理由は?と考えた時、本人の数少ないコメントから引用すれば「いつも妥協する事なく音楽制作を進めてきた」からに他ならないという事だろう。だが、先日偶然にもその言葉を裏付けるような出来事に遭遇した。  この原稿を書くにあたり、締め切りの関係もあって、僕は「悲しいほど貴方が好き」と「カラッといこう!」の仮ミックス音源を聴かせてもらった。その音源はもうすでに全トラックが収録され、あとは最終各音源とヴォーカルのバランスや定位を絞り込むくらいのチェックで終了といった段階の音源で(もちろん、曲全体の構成、作詞、アレンジ全て入っている)それ自体、一聴しただけでは「あの、いつものZARDサウンドがまた戻ってきたな」と思わせるに十分な仕上がりだった。僕は当初、その音源でレビューを書こうとしていたのだが、それから3日程して、アーティスト担当者より「より最終形に近いミックス音源が出来たので……」と渡されたその音源は、何という事だろう! 見違える程に良くなっていたのだ。何をどうすればこう変わるのかは全く分からないのだが、イントロの数秒を聴いただけでも明らかに音の粒立ちが違う。ピアノの立ち上がりの明瞭さ、続くバンド・サウンドへの導入部のクリアな音色、そしてヴォーカルの瑞々しく色香をまとった艶やかさetc……まるで霧が晴れたかのようなその研ぎ澄まされた音の整合感に耳を奪われた。音色を足したとかそういうのではなく、これまで培ってきたZARDサウンドの世界観を覆す事なく、ブラッシュ・アップされたZARDの音がさらに輝き始めていたのだ。
 聞くところによると、この「悲しいほど貴方が好き/カラッといこう!」は昨年秋より制作がスタート、発売日の工程ギリギリまで最終調整が行われているとの事。実際、今回はいつものようにコーラスを多用してウォール・オブ・サウンドのようにも作ってみたけれど、メイン・ヴォーカルがとても良かったので最終的にコーラス部分をかなり割愛したとか、引き算の作業も結果的には行われているそうだ。1つのZARDサウンドの完成形を導くために、音を足したり引いたり最後の最後まで試行錯誤して届けられるZARDの音楽。「妥協する事なく……」の一端を垣間見た出来事だった。一聴するといつもながらのZARDサウンド。ところがそこには時代を超えていくための切磋琢磨した匠の技が生かされているのだ。
 そんなZARDの飽くなき探求心と努力が結実した41作目のシングル曲「悲しいほど貴方が好き/カラッといこう!」がいよいよ届けられた。
 まず、「悲しいほど貴方が好き」は、今年で放送10周年を迎える「名探偵コナン」のエンディングテーマ曲。作詞:坂井泉水、作曲:大野愛果、そして編曲には「負けないで」「愛が見えない」他、多数のZARDヒット曲を手掛けた葉山たけしが担当。黄金のトライアングルによるこの曲、タイトルからすでに印象的で、萌え出づる恋の模様をその一言で言い当てている。曲調は、マイナー調ピアノの音色から雄大なバンド・サウンドへと一気に移行していく王道の「切ない」系ZARDサウンド。安定したヴォーカル・メロディを聴かせながら、時折聴かせる高音部での張りの危うげな声音は、歌詞と相乗に効果し合い、聴き手の意識を歌に引き込ませずにいられない。まさにZARDファンが待ち望んだ、心を染め上げられるナンバーだ。 そして両A面となるもう1曲「カラッといこう!」。こちらはフジテレビ系「めざましどようび」の冬期テーマソングになっている。ご存知の方も多いと思うが、この番組のテーマを担当する事は、1年以上前に決定していた。それだけに、どんなタイプの楽曲をZARDが提供するのか興味が持たれていたが、完成した曲は、番組の内容を象徴するような明るく爽快なナンバー。タイトル通りにカラッとしたメジャーな曲調とメロディ、軽やかなアコースティック・ギターのカッティングとフォーキーなグルーヴを持ったリズム・トラックのコンビネーションにも、思わず笑顔がこぼれそうだ。また、こちらのヴォーカルは力強くもサラッと流せる清涼感をたたえ、リリックは老若男女誰にも分かりやすく、朝の晴れやかな気持ちを後押ししてくれる。とりわけ、女性の皆さんには、かけがえのない応援ソングとなる事請け合いのナンバーだ。この曲も前述のトライアングル・チームが作詞・曲・アレンジを担当している。
 さらに、今回、坂井泉水の2枚の写真をあしらったジャケットもZARDファンにとっては気になる部分があるのでは? 1枚は並木道の前でバケットを抱えたオフショット姿の坂井泉水、そしてもう1枚はレコーディング・スタジオの中だろうか、アンバーな照明の中で髪を後ろに束ねるオンな状態での坂井泉水。僕は、この並木道はひょっとして初期の「もう探さない」のシングル・ジャケットに登場した青山の絵画館に通じるあの並木通りでは?とか、もう1枚のスタジオ写真にもデビュー・シングル「Good-bye my Loneliness」のジャケット写真のイメージを重ね合わせて見てしまったりするのだけれど、これは思い込みし過ぎだろうか。
   いづれにせよ、デビュー時から一貫して雄大なバンド・サウンドでありながら繊細な音楽観を持った普遍的な自らのサウンドを追求し続けてきたZARD。今回もその基本に忠実にブレる事なく、なおかつ新鮮なサウンドを届けてくれた。やはり、それこそが引き継がれる“ZARDブランド”に違いないのだろう。今回も、心置きなくその世界観に浸りきって聴いてみて欲しい。
(TEXT BY SAI SAIDA)


ZARD

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「悲しいほど貴方が好き/カラッといこう!」

2006.3.8 Release


B-Gram RECORDS
JBCJ-6007 ¥1,050(tax in)