北原愛子

New Single
「世界中どこを探しても」

2007.3.21 Release


●まずは2月18日にラフォーレミュージアムROPPONGIで行われた愛内里菜さんのバレンタイン・ライヴにゲストとしてご出演された時の感想をお願いします。
北原愛子(以下北原):大阪のhillsパン工場ではコンスタントにライヴをさせて頂いてるんですけど、今回の様なもう少しキャパが大きめの所ってあまり経験がないので緊張しました。実は1、2曲目ってあまり記憶がないんですよね。でも、とても楽しかったです。

●今回のライヴでは新曲も披露されましたが、ライヴで歌ってみていかがでしたか?
北原:私のライヴ曲っていうと「DA DA DA」とか「grand blue」とか、ノリのいいみんなで騒げるタイプのラテンの曲が多いんですけど、今回の様な壮大なイメージの曲は珍しいので、また新たな北原愛子を見て頂く事が出来たかなと思いました。それに、Dメロのあたりからスポット・ライトがステージにパッと当たって、そこから最後サビに行く感じがレコーディングでは味わえなかった気持ち良い感覚として自分の中に生まれて、ライヴで歌ってみて改めてこの曲の魅力を感じる事も出来ましたね。

●そんな新作「世界中どこを探しても」ですが、前作に続いてご自身の作詞・作曲という事で、曲はいつ頃作られたんですか?
北原:前作同様、この曲もデビュー当時に作ったデモの中からの1曲です。実は前作をリリースするのと同じ時期に、“どっちの曲にする?”って話が出ていて、たまたまこちらが後になったんですけど。

●ちなみに北原さんの場合、作曲ってどんな風にされているんですか?
北原:歌詞と一緒で、浮かんだ時にラララで歌って録っておく事が多いです。アレンジャーさんみたいに沢山の機材があるわけではないので、キーボードでコード弾き位ですけど、それにラララでメロディを歌って、あとで譜面に起こす感じですね。

●曲って、アレンジによってどうにでも変わりますよね。デモがアップ・テンポでも、アレンジでスローなバラードに変身しちゃったり。今回の曲は、アレンジが上がった時に自分のデモとの変化みたいなものはありましたか?
北原:今回のオケはフォルクローレのテイストが散りばめられているんですけど、それは最初に私からアレンジャーさんにリクエストさせて頂いたんですね。イントロにも入っているんですけど、ケーナという楽器の音が個人的に好きで、今回ケーナに初挑戦したくて、自分の持っているお気に入りのフォルクローレのCDを何枚かアレンジャーさんにお渡しして、それを参考に作って頂きました。

●イントロの所から聴こえてくるフルートですかね? 木管楽器の音色が温かい感じで印象的でしたが。
北原:頭の所はケーナですね。イントロには、同じくフォルクローレで良く使用されるチャランゴも入れて頂いてます。私自身も今回のイントロがすごく気に入っていて、そこばかり何度もリピートして聴いていたんですよ。

●ラテン・テイストとフォルクローレの調和っていうのは、元気なイメージのラテン・ナンバーとはひと味違った、どこか温かくて、でもどこか切ない雰囲気になるんですね。ケーナの入った音楽をいつかやりたいと、ずっと思っていたんですか?
北原:そうですね。いつか民族系の音楽をやってみたいって思っていました。ラテンとフォルクローレを融合させて、広い意味のラテンの作品が生まれたと思います。独特ですけどね。ちょっとレトロな感じで。私の作品はあくまでベースはラテンていうのがありつつも、そこから色々なテイストに挑戦したいので、そういう意味でも今回は良い挑戦が出来たなって思います。

●歌詞のテーマは?
北原:「結界師」というアニメのエンディングテーマのお話を頂いてから作り始めたので、まず原作のマンガを全て読んでから書きましたね。すごい面白くて最後まで読んじゃったんですけど(笑)。それから、最近よくニュースでいじめ問題とかやっていますよね。人が人を傷つけてしまうみたいな。それを観て感じた事をメッセージとして練り込みました。「結界師」を観てくれる年齢層の人達にも何かメッセージが送れたらいいかなって思ったんですよね。

●アニメってどんなストーリーなんですか?
北原:簡単に言うと、ある学校があってそこに妖怪が一杯集まってくるんですね。それで、主人公と主人公よりちょっと年上の幼馴染みのお姉さんが2人でそこを守っていくっていうストーリーで、主人公はこのお姉さんの事がちょっと好きで。で、守りたいんだけど、実は守られているみたいな。

●そういうキズナみたいなものをテーマに歌詞を書きたかったという事でしょうか?
北原:そうですね。これは男の子目線で書いたんですけど、このアニメの主人公の男の子がとても純情っていうか、好きなんだけど、好きって言えないちょっと優柔不断な女の子っぽいタイプの子なんですね。守りたいんだけど、守れていない、どうしよ〜っていう。だから男の子目線と言えど、ちょっと女の子っぽくなっているかもしれないんですけどね。

●サビに、“明日は誰にでもあるわけじゃない”なんてフレーズが出てきますけど、どこか刹那的というか、だから、“世界中どこを探しても代わりのいないあなたを大切にしたい”っていう内容になっているかと思いますが、この辺がいじめ問題とかとつながってくる感じですか?
北原:はい、その通りですね。少しでも耳に残って1人でも救えたらいいかなって。救えたらっていうのはおこがましい言葉ですけど、少しでも支えになれたらいいかなと思って書きました。

●そういう社会の出来事とかを、日頃から気にされていますか?
北原:そうですね。そういう事が気になって歌詞に反映される事も最近は多いですね。せっかく聴いて頂くんだから、何か新しい風を吹き込めたらなって。みんながみんな自分の気持ちを歌えるわけではないじゃないですか。私はこうやって歌わせてもらっているわけだから、何ていうか、お役目みたいな、代弁者っていうか……。自分の回りの友達とかも、悩みのある人って多いんですよ。そんな狭い世界だけでも、こんなに悩んでいる人が居るんだから、もっと大きな世界を考えた時に、きっとたくさんの人が悩んだり、傷ついてるんじゃないかなって思いまして。

●ところで、今回のタイトルはどんな風に決まったのでしょうか?
北原:サビの頭のメロディから言葉を付ける時に、もうこの言葉しかなかったんですよね。それでたまたまそんな時、テレビから流れてくるいじめのニュースとかを観ていて、このサビの1行目“世界中どこを探しても あなたの代わりはいない”っていうフレーズが浮かんできて。なので、今回の歌詞はこの1行がまず出来て、アニメのストーリーも加味しつつ、全体を広げていきましたね。

●これまで沢山の楽曲を産んできたわけですが、北原さんが作品を作る時に一番大切にしている事って何ですか?
北原:“心”“気持ち”“魂”ですね。

●それは、歌詞もそうだし、歌入れの時なんかも意識されているんですか?
北原:そうですね。心に訴えるっていうか、感情にスっと入っていけたらいいかなって思っています。

●今作の、特に最後サビの辺りの歌い方はすごい感情が入ってるっていうか、伝わってくるものがありますよね。
北原:音程をきっちり機械的に合わせるっていうよりも、気持ちとか、感情とか、人間味みたいなものを大切に歌入れしましたね。例えば人って、泣く時って上手にしゃべれない時とかあるじゃないですか。それと同じで、感情が入ると、音程がどうとかっていう事よりも、もっと訴えかけるものがあるんじゃないかなとは思いますね。

●今回の曲はどんな人に聴いて欲しいですか?
北原:アニメを観てくれる学生の方達の年齢層に向けて書いた歌詞ではありますけど、どんな年齢層の方でもこれから夢とか恋だとかを追いかけようとしている人達に聴いて欲しいですね。

●続いて2曲目の「サクラサク」についてお伺いします。こちらはどんな風に作られていきましたか?
北原:春に発表する曲という事で書き始めたので、春っぽい曲にしようと思いまして、それで「サクラサク」というタイトルを決めました。

●これから新しい門出を迎える人はもちろん、この時季、少し疲れて夢を諦めて故郷に帰ろうかななんて思っている人達に、是非聴いて欲しいなって思う曲でしたが。
北原:そうですね! まさにそういう方に聴いて頂けたらと思います。そういう人達の心が温まる様な、心でサクラを咲かせる様な、淡く色付けられる様なイメージで書いていったんで……。それに例えば上京して10年位経っている人でも、あの頃はそうだったなって懐かしく聴いてもらっても、ふと初心に帰れるきっかけになってもらえたら嬉しいなと思います。

●ご自身に向けて歌詞を書く事も多いと以前話されていましたが、この歌詞なんかはどうですか?
北原:そうですね。私は上京っていうのはした事がないので、親とかとの別れっていう寂しさは経験がないんですけど……。サビの最後で“自分をもっと好きになれますように”っていうフレーズが出てきますが、近くに居ても遠くに居ても結局、自分の事が好きじゃないと世界ってどんよりすると思うので、その辺りは自分にも共通する部分かもしれませんね。

●そして3曲目「この空の下で」ですが、こちらも切ない曲ですね。
北原:そうですね。これは恋愛の曲ですね。今回他の2曲で恋愛の歌詞を書けなかったので、この曲でどっぷりと書いてみました。

●サビの頭の部分の“この空の下であなたが生きているだけで良いから”っていうフレーズですが…。
北原:究極の愛ですよね。

●でもなかなか実際はこういう風には思えなくないですか?
北原:とことんいくと大切な人がどこかで生きているだけでいいんじゃないかって、私はそう思いますね。やっぱり究極は、大切な人には幸せで居て欲しいって思うし。大切な恋を失ったけど、頑張っています系の歌詞になっているんですけど、私がもしこの世界観そのままの状況に居たとしたら、やはりこの主人公と同じ事を思うだろうなって思いますね。

●それじゃ北原さんの恋愛観が表れた歌詞になっているって事ですよね。
北原:うん、そうですね、きっと。

●“その顔も声も 少しずつ薄れて来て ホっとするのに何故か寂しい”っていう部分なんかも、恋を失った事がある人はきっと共感出来るフレーズですよね。
北原:そうですね。忘れられてホっとはするんだけど、なんか切ないっていうか、もう過去の事なんだなっていう、そうなってきた時の寂しさっていうか、矛盾? その辺が伝えられるといいなと思いました。

●間奏とアウトロで入ってくる男性コーラスが印象的ですね。
北原:スペイン語で囁いて頂いていますね。美男声で入れて頂きました(笑)。あのコーラスを入れてラテンの色合いを濃くしよう!って提案されて、入れて頂いたんですけど、初めに聴いた時は正直インパクトがありましたね。でも曲全体で聴いた時に新しいテイストが出せて良いスパイスになっているかなと思いました。

●今年本誌登場初なんですけど、今年こんな事したいとかありますか?
北原:今年はもっと音楽を掘り下げていって、音楽漬けの1年にしたいなって思います。

●デビューから5年経ってからも、リリースするごとに作品から成長を感じられるアーティストって、実はなかなか居ないと思うんですよね。北原さんの場合、歌の表現力だけじゃなく、作品全体のクオリティがどんどん上がっているなって感じるんですよね。だからインタビューさせて頂くにあたって新しい作品を聴けるのも楽しみですし。
北原:それはとても嬉しいですね。いつまでも成長し続けたいって思うし。“北原愛子”をどん欲に突き進みたいって、今は思ってるんですよね。デビューしたての頃は右も左も分からなかったせいか、なんか正直自分らしさってものが良く分かっていなかった思うんですよね。でも最近はそれを自覚出来、愛せるようになったと思うし。そう思えるようになった事が、成長したいって思うエネルギーの源になってるとも思いますし。

●無意識に自分の中に、今突き進んでる事に確信が持てているんでしょうね。
北原:そうですかね。イントロを聴いただけで、あっ、これは北原愛子だって分かって頂けるように、今やっている音楽をもっと突き進んでいきたいですね。


北原愛子

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「世界中どこを探しても」

2007.3.21 Release


GIZA studio
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