ZARD

坂井泉水フェイバリットソングス
『Soffio di vento
〜 Best of IZUMI SAKAI Selection〜』
&
プレミアムセレクション
『Brezza di mare
〜dedicated to IZUMI SAKAI〜』

2007.8.15 On Sale!


これまで数々の名曲を世に送り出し、沢山の人々へメッセージを送り続けたZARD・坂井泉水。その彼女が生前、最も愛し、生涯の大半を注ぎ込んだ楽曲の数々が、2枚の追悼アルバムとして8月15日にリリースされる事が決定しました。今回は長年ZARD制作チームに携わってきた寺尾広氏によるライナー・ノーツと共に、当時を振り返りつつ作品を紹介します。イタリア語で“風のそよぎ”を意味する“Soffio di vento”がタイトルに付けられた『Soffio di vento 〜 Best of IZUMI SAKAI Selection〜』は、坂井泉水が“直感で選んだ”というお気に入りの作品をもとに、シングル曲も含めた坂井泉水セレクションの13曲を収録。特に彼女が愛した楽曲ばかりを集めた、珠玉の1枚です。

01.あの微笑みを忘れないで
作詞:坂井泉水 作曲:川島だりあ 編曲:明石昌夫 (3rd AL『HOLD ME』収録)1992.9.2
ロック・バンドFEEL SO BADのヴォーカリスト川島だりあさん作曲ですが、彼女の提供してくれた中ではもっともポップで明るく爽やかな曲に仕上がっていると思います。それはアカペラのコーラスで始まる印象が強いのかもしれません。2004年の全国ツアー“What a beautiful moment Tour”でも頭のコーラスを楽しめました。なおかつ明石昌夫さんアレンジのtrackはギターを始め、全編あくまでもロックになっています。歌詞は、主人公が自分自身を勇気付けようと自問自答してるのですが、無事に失恋の悲しさを吹っ切って、新しい明日に向かっていく様は、この曲の持つメロディ、trackにぴったりです。また“電話”“口笛”など聴覚、“レンガ色”など視覚、“ぬるいコーラ”など味覚、“風を感じて”など触覚……。いわゆる五感をフル稼働させて、歌詞の世界を伝えてくれています。

02.黄昏にMy Lonely Heart
作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫 (10th Sg「きっと忘れない」c/w)1993.11.3
この曲は一転して、失恋した自分に言い聞かせながらも、まだ完全に吹っ切れていない主人公を描いています。栗林誠一郎さんの書くメジャー・コードでもマイナー・コードでもない曲調が、こういう内容の歌詞を坂井さんに書かせたのでしょうか。Trackは、ZARDには少ない跳ねたビートになっています。歌のメロディもサビの頭が跳ねていて、実に軽快です。楽しい雰囲気の中、坂井さんの歌は、比較的さらりと揺れ動く心を表現しています。このToo Muchでない感じがZARDの特徴の1つなのではないでしょうか? 感情を込め過ぎて過剰に“悲しい”“辛い”というよりも、さらりと歌ってくれた方が、かえってずっしりと伝わるのではないでしょうか? 主人公も自らに向かってつぶやいています。“これで本当によかったと 言いきかせた”と。

03.愛が見えない
作詞:坂井泉水 作曲:小澤正澄 編曲:葉山たけし (15th Sg)1995.6.5
小澤正澄さん提供の作品。アレンジは葉山たけしさんです。今もそうですが、この曲をリリースした95年の葉山さんのtrackは、次曲の「サヨナラは今もこの胸に居ます」も含め、とても多面性を見せてくれていて、我々スタッフも仕上がりを楽しみにしていました。ハードなロックで疾走感溢れていて、デビュー前に実はアン・ルイスの歌を得意としていた坂井さんにもぴったりで、ZARDのもっともワイルドな作品の1つになりました。歌詞は具体的なエピソード満載ですが、聴き手がその世界に入り込む、というよりかは、それぞれ好きな様に想像出来る内容になっています。このあたりもZARDに普遍性のある理由でしょう。Bメロはとても早口な歌詞になっていますが、ラップではなく、伝えたい事をリズミカルに歌った印象です。当時すでにラップがヒット・チャートを席巻していましたが、そのまま取り入れなかったところが坂井さんらしいです。

04.サヨナラは今もこの胸に居ます
作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:葉山たけし (16th Sg)1995.8.28
栗林さんの提供作品。サビの栗林さん本人によるコーラスも胸にじーんときますし、出来上がりも、メロディ・センスを生かした、切ない物語になっています。イントロのブルース感覚溢れたギターも色を添えています。しかしパッと聴きは、あくまで爽やかな味わいで、そこがまさしく前述した様に、ZARDの特徴だと思います。爽やかなメロディとtrackだからこそ、切ない歌詞にしたり、切ない内容だからこそさらりと歌ったり、またエピソードが具体的だとしても独りよがりにならず普遍的だったり。言い換えれば、“隙”があるわけです。坂井さんの歌詞と歌に自然な説得力があるお陰でしょう。ZARDプログラムは、試行錯誤して作品を作り続けていますが、緻密な仕上がりではなく、聴いて“ああ良いなあ”というものを目指しています。

05.ひとりが好き
作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫(AL『もう探さない』収録)1991.12.25
歌詞カードを見ると、非常に少ない言葉数になってますが、曲は4分49秒あります。でもその長さを全く感じさせないです。trackに大きな変化があるわけでもなく、メロディの種類が多く、めくるめく大展開をしているわけでもなく、特徴的なフレーズの言葉があるわけでもないのですが、最後まで飽きさせずに、聴いているうちに、あっという間にエンディングになっています。まさに、メロディ、歌詞のマッチングが良く、そしてそれを歌う坂井さんにもぴったりだったという事でしょうか。また坂井さんは他のヴォーカリストよりも、リズムが重めです。通常ドラムのスネアのビートが重めだと、気持ち良い場合が多いのですが、坂井さんの歌は、スネアも含め、他のどの楽器よりもタイミングは後ろになっています。この“どっしり感”もZARDの音楽性の考察には必要な要素でしょう。

※6曲目以降の収録曲紹介は誌面をご覧下さい!!


16年に渡って同じチーム編成で音楽制作を行ってきたZARD。今作は、彼女が大事にしたその神聖とも言えるスタジオで、共に創作活動に携わったレコーディング・スタッフが追悼の意を込めて選曲した作品。ZARDサウンドの神髄に迫る名曲達、ZARD再発見的な楽曲を収めたプレミアム・セレクションとして、『Golden Best 〜15th Anniversary〜』『Soffio di vento 〜 Best of IZUMI SAKAI Selection〜』にも未収録のシングル9曲を含む全14曲が、ZARDの魅力と共に甦ります。こちらも寺尾広氏によるライナー・ノーツをご紹介したいと思います。

01.瞳閉じて
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:徳永暁人 (36th Sg)2003.7.9
2003年12月に音楽プロデューサー長戸大幸さんと坂井泉水さんと一緒に、大野愛果さんのデモのストックを数多く聴き合いました。その中にあった曲の1つです。ちなみに、その時に聴いた他の大野さんのデモ数曲も、製品としてアルバム『止まっていた時計が今動き出した』『君とのDistance』に収録されています。この様にZARDのプロジェクトは、ZARD用に作曲された曲を吟味するよりも、作曲家が自由に作ってきた曲を坂井さんが選ぶ方が多かったです。仕上がりは前作の「明日を夢見て」と同様、1番はバラード、2番からはアップ・テンポというアレンジ(アレンジャーはdoaの徳永暁人さん)になっています。間奏はSax(演奏はDIMENSIONの勝田一樹さん)ですが、シングルとしては久し振りの選択でした。ヒューマンだったり、切なかったり、華やかだったり(この曲はこれが近い)、ギターとはまた違う味わいにしてくれます。最後サビで半音上に転調する事で、華やかさはより一層広がっていると思います。

02.明日を夢見て 作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:小林哲 (35th Sg)2003.4.9
この曲は、「名探偵コナン」のタイアップで2003年1月から流れていた音源と、4月に発売されたCDではアレンジが違います。徳永さんがテレビ・サイズをミディアム・テンポで作成して、歌もMIXも無事終了し、テレビ・オンエア用の音源は2002年10月末には納品していました。しかし、“もっとゆっくりと歌いたい”、と坂井さんから希望がありました。より良い内容を求めて、色々試した結果、年明けに小林哲さんにアレンジを一からお願いする事になりました。trackが一旦完成した後も、バラードで歌うなら、もっとテンポも含めて枠組みのない、自由な歌い回しになるだろう、という結論になりました。ただし、坂井さんの歌に合わせるのではなく、実際は先にtrackを作成するので、小林さんにイントロから1番のサビの手前までは、それこそ1小節ごとにテンポを変えてもらいました。

03.風が通り抜ける街へ
作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎 編曲:徳永暁人 (21st Sg)1997.7.2
Barbierのtrack制作で坂井さんと共に色々趣向を凝らしてくれた徳永さんが、ZARD本体でもアップ・テンポの楽しいアレンジをしてくれました。60年代リズム・パターンにハードなドラム音色。最後サビの手前は中期〜後期ビートルズの遊び心のある仕掛け。さらには村上恭太郎さんのビーチ・ボーイズを彷彿とさせるコーラス・ワークが聴けます。歌詞の世界は、ZARDのシングルには珍しく?無邪気でお茶目な乙女心を歌っています。サビは軽快ですが、Bメロの“でも あなたのとなりで平気な顔をしているのは もう限界”“思ったことを すぐ口に出してしまう 悪いくせを許して”等、坂井さんは簡単な言葉で、心の揺れ動く様を鋭く的確に表現しています。ジャケットは、ひょっとしたらもっとも弾けたものの1つではないでしょうか? ちなみに、この写真の坂井さんのしている腕時計は、SWATCHの97年当時の新作でした。

04.I'm in love
作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎 編曲:池田大介 (AL『forever you』収録)1995.3.10
この曲の収録されたアルバム『forever you』がリリースされた1995年は、阪神・淡路大震災、オウム真理教のサリン事件等、暗いニュースが日本を駆け巡りました。「I'm in love」の歌詞は、ヒーローが必要だ、と説いています。不安定な時代にメスを入れつつも、坂井さんはそれを、理論武装したプロテスト・ソングにしてしまわず、必ず身近な出来事、日常の話に置き換え、手に取れる様に問題定義してくれます。しかも、制作したのは94年ですから、前述の様々な事件が起きる前です。これは、いわゆるシンクロニシティー状態になったとも考えられます。あまり時代にぴったりだと、流行としてもてはやされ、最後は廃れていく危険性もある訳ですが、ZARDは、時代に寄り添いながらも、決して迎合せずにいたから、存在し続けているのだと思います。大黒摩季さんと生沢佑一さんのコーラスが全編ワイルドに入っています。

05.君がいない(B-version)
作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫 (7th Sg)1993.4.21
この曲は、もともと栗林誠一郎さん自身の3rdアルバム『You never know』(91年2月6日リリース)に収録されていました。タイトルは一緒ですが、ZARDで収録する際、歌詞の内容は変えています。でも解釈によっては十分アンサー・ソングにも思えます。個人的には今回初めて“刺激という スパイスだって必要かもね”という所の奥深い所を理解して、改めて感動しています。筆者は40を越えて、ようやく把握出来たわけで、ちょっと遅いですね(笑)。アレンジは当時のZARDのアレンジを数多く傑出した(まさにこういう表現が的確でしょう)明石昌夫さん。重めのドラムに軽快なピアノの刻みが心地良く組合わさっています。栗林さんのオリジナルも彼のアレンジですから、興味のある方は、聴き比べてみて下さい。ちなみに、「君がいない」には、シングルと(B-version)と2つあります。坂井さんのより良い歌声の響きを考慮して、アルバム収録の(B-version)では先行して発売したシングルとヴァージョンを変えて作成し、出来も良かったので採用されました。違いをまだご存知ない方は、こちらも是非聴き比べて下さい。もし楽器が手元にあるならば、尚良いです。無事気付かれた皆さんは、あ!と驚くのではないでしょうか?

※6曲目以降の収録曲紹介は誌面をご覧下さい!!


ZARD

坂井泉水フェイバリットソングス
『Soffio di vento
〜 Best of IZUMI SAKAI Selection〜』

2007.8.15 Release


B-Gram Records
JBCJ-9023 ¥3,059(tax in)
【CD+特典DVD付】



ZARD

プレミアムセレクション
『Brezza di mare
〜dedicated to IZUMI SAKAI〜』

2007.8.15 Release


B-Gram Records
JBCJ-9024 ¥3,059(tax in)
【CD+特典DVD付】br>