上木彩矢

New Album
『明日のために 〜Forever More〜』

2007.10.10 Release


1stアルバム『Secret Code』で自身の音楽スタイルを提示した上木彩矢が、10月10日にリリースの待望の2ndアルバム『明日のために 〜Forever More〜』で新たな一面を見せてくれている。昨年の彼女はロック・サウンドを前面に出したタイプの楽曲を発表する事が多かったせいか、熱く激しいというイメージが先行していた様に思う。もちろんそれは彼女の持つ一面ではあったが、それが全てではなかったという事は、1stアルバム発表後にリリースされたシングル等を通して分かったのではないだろうか。今作は、ヒット・シングル「明日のために」「ミセカケのI Love you」「眠っていた気持ち 眠っていたココロ」を含む13曲に加え、ボーナス・トラックが収められたボリュームたっぷりのアルバム。楽曲タイプも多彩で、ダンス・ビートが加えられたものや、ポップ・テイストが施されたキュートなナンバー、そして彼女のヴォーカルがじっくり堪能出来るスケールの大きい楽曲等、良い意味で今までの彼女のイメージを覆す1枚となった。早速今作について上木彩矢に話を聞いてみた。(INTERVIEWED BY EMI MORI)

●今回のニュー・アルバムは、1stアルバム『Secret Code』から約1年3ヶ月振りのリリースとなりますが、いつ頃から制作に取り掛かっていたんですか?
上木彩矢(以下上木):今年に入って少ししてから“そろそろアルバムも作らないとね……”という話が出たんですけど、実際は夏前位から本格的にアルバム制作に入ったという感じです。シングルの「明日のために」が出る頃は、まさにアルバム制作と同時進行でした。

●という事は、短期間で一気に作って行ったと。
上木:毎回そうなんですけどね(笑)。去年は初めてのアルバムだった事もあってあたふたしたりしていたんですけど、今年は“またこの時期が来たね”という感じで、割り切って作っていきました(笑)

●今回のアルバムはこういうものにしたいというのは、最初からあったんでしょうか?
上木:大まかな“こんなもの”“あんなもの”というイメージはあったんですけど、作っていくうちにキーを変えたり、アレンジを変えたりという事はたくさんありました。1stアルバム程ではなかったですけどね。

●選曲に関してはどういう感じで進んでいったんでしょうか?
上木:今回は色々な作家の方々の曲を聴かせて頂いて、80曲位あった中から徐々に絞り込んでいったという感じです。今まで、ここまで曲の種類の幅を広げて聴いていった事はなかったかもしれませんね。今回は枠に縛られてない分、余計に真剣に取り組めたというか……。

●以前のインタビューでも、色々と新しい事をやっていきたいとか、今までナシだったものもアリにしたい、という様な事をおっしゃっていましたが、そういったものも今回のアルバムに入っているのでは?
上木:だいぶ冒険していますね。いわゆる前のアルバムでのロックな上木彩矢というのは1stアルバムで聴いてもらって、2ndアルバムは一番新しい私自身の姿が入っているので、それを受け止めて欲しいなと思います。今回のアルバムにはポップな曲もありますけど、それは私にとっては早くライヴで歌いたいものなので……。

●「世界中の誰もが」はロックな感じの曲ですね。
上木:アメリカン・ロックっぽいですね。タイトルはスケールが大きい感じになっていますけど、1人1人が思っている事だから大丈夫さという様な事を歌ったもので、私らしい部分が出ていると思います。みんなが心に傷を抱えていて、負けそうになったり折れそうになったりしているという意味での“みんな”を表現する為に“世界中”という言葉にしました。

●歌詞に励まされる様な事はありましたか?
上木:書いている途中はあまり感じなかったんですけど、歌入れをしてフィード・バックを聴いた時は、励まされるなと思いましたね。この歌詞を書いた頃は制作が大変だった事もあって、余計に……。

●「YOU & ME」はライヴ感が出ている曲ですね。
上木:音がすごく可愛いんです。ライヴの時に踊ってそうだし、バンド・スタイルでガンガンにやっていてもおかしくないタイプの曲というか……。今まではデジタル加工した感じのものはあまり好きじゃなかったんですけど、アレンジを聴いた時“めっちゃ可愛い! これいい!”って思ったんです。だから第1段階のアレンジからほとんど変わっていないですね。

●「ミセカケのI Love you」の時もデジタル・サウンドとロックの融合にチャレンジしたという事をおっしゃっていましたが、「YOU & ME」は更にそれが出ていますね。
上木:大丈夫かなっていう位、めちゃめちゃデジタル・サウンドが入っていますからね。でもこの曲はライヴでみんなで一緒に歌っている風景が見えるからいいなって……。

●歌詞は“いいから前に行こうぜ”みたいなはっきりした内容になっていますが、これはどういうイメージで書かれたんですか?
上木:この曲はタイトルが先に決まった曲で、すごく希望を持った内容にしようと思って書きました。アルバムだとネガティヴな内容の歌詞に偏りがちなので、気持ちを上げて行こうと……。

●レコーディングはスムーズに進みましたか?
上木:大変でしたね。今回はレコーディング期間が短かったのと、作っていく過程での色々と細かな変更もあり、結果毎日歌うというスケジュールだったんです。今までも1日1曲というペースで歌入れをしていましたし、その時々で気持ちの切り替えもちゃんと出来ていたので嫌ではなかったんですけど、そこに辿り着くまでがちょっと……。

●この曲はライヴで歌ってからこそ、という曲ですね。
上木:そうですね。私はライヴの女ですから(笑)

●「Tears」はどっしりとしたロックですね。
上木:1番私らしいと言われる曲かもしれませんね。歌っていても違和感はなかったし、レコーディングもすぐ終わりました。歌詞もそのままの私という感じで、すぐ書けました。サビの歌詞に“ギャーギャーと泣きわめく自分に”とか“ピーピーと泣きわめく自分に”という部分があるんですけど、こんな風に擬音を歌詞にした事が無かったので、そこも聴いて欲しいです。

●「ココロが..もう少し」はシリアスな感じの曲ですね。
上木:この曲は、アレンジがすごく気に入っています。イントロからドキドキして、ドラマを見ている様な感覚になる所が好きですね。サビの終わりからDメロにかけての部分もすごく好きです。私が書いている作詞ノートは、単語を書き綴っている感じになっていて、作詞をする時にそれを組み合わせて作っていっているんですけど、「ココロが..もう少し」もそうやって歌詞を付けていった中の1曲です。イメージとしては、夜な夜な自分の音楽がもっと広がっていくといいなと思った事を広げて書いていった感じですね。

●そういう方法で歌詞を書いていくという事は、言葉のハマり具合等が重要になってきますよね。
上木:1曲1曲をしっかり書いていくというのは、言葉の使い方とかも大変なんですよね。だから思い付いたものを書き留めていた言葉の方が、悩んで書き出したものより自然体なものが多かったりするので、しっくりハマる事も多いです。

●「夢の中にまで」は少しダンス・ビートが入った感じですね。
上木:これはデモの段階から気に入っていて、早い時期からアルバムに入れようと決めていた曲です。これは洋楽っぽいメロディ・ラインの曲なので、歌詞をはめるのが大変でした。歌詞の中の主人公は、相手の事をすごく愛し過ぎちゃってる人ですね。この曲はサビからのキーが高いので、とにかく力を入れて何も考えずにガンと歌いました。

●「もう帰らない」は、タイトルからしてインパクトがありますね。
上木:この歌詞を書いている時は、心境的には少しネガティヴになっていたかもしれません。デモは繊細で素敵な感じでしたね。去年の作品ではバラード調のものはほとんど入っていなかったので、今年は、バラードまではいかなくてもミディアム・テンポの曲もどんどんやりたいと思っていて、今回のアルバムはそういうタイプの曲と勢いのある曲を半々ぐらいで構成しています。

●「Forever More」は、どういう部分が気に入って今回のアルバムの収められたのでしょうか?
上木:やんわりした感じの曲なんですけど、淡々とリズムを刻む中で淡々と歌が入って進んで行くという、今までにやった事のないタイプの曲だったから、そこが良かったというか……。

●音の幅が広い曲ですよね?
上木:そうなんです。デモの音だと下のキーに合わせて歌うと上が高くなり過ぎてしまったり、歌入れに苦労した曲ではありました。

●そういう難しい曲に敢えて挑戦したというのは、何か理由があったのでしょうか?
上木:まずは“歌う”という部分で、自分のキャパシティを少しでも増やしたいなという思いがありました。そういう挑戦を、アルバムの制作過程でするというのはとても良いチャンスかなというのと、作って行く途中の段階で、周りから“良いね”という意見があったので、これを機会に、大人っぽい部分も出したいという事でこの曲を選びました。コーラスもばっちり入って、良い曲になりました。だからと言って、これが今回のアルバムのメイン曲という訳ではないですけどね。

●歌詞はどういう事をテーマに書かれたんですか?
上木:相手と向き合う事が苦手で、人を信じられなかった主人公が“この人とだったら、もう1度笑えるかもしれない”と思って前に進んで行く歌詞になっています。

●こういうタイプの曲は、これからも歌っていきたいですか?
上木:そうですね。でも自分が今までやった事のないものに挑戦するのは、やっぱり大変です。歌に合った声が見つかるまで何度も歌ったりしたり、心構えをしてから歌い込んで形にしていくので。結果的にそこで自分の中の新たな引き出しが増えていく感じです。

●この曲はアルバムのサブ・タイトルにもなっていますね。
上木:もともと、アルバム・タイトルが『明日のために』という事は決まっていたんです。そこに、もともと思い描いていたものと言葉の意味合いが合った事や響きが良いという事で“Forever More”を選びました。

●今回のアルバムにはシングル曲はもちろん、新曲もたくさん収録されていますが、その中でカップリング曲の「youthful diary(AL ver.)」が入っているのには、何か理由があったのでしょうか?
上木:この曲は自分のお気に入りの曲の中でも特に気に入っている曲というか……。実は「ミセカケのI Love you」をシングルとして出す時に、「youthful diary」をカップリングじゃなくて両A面にしたい位だったんです。それだけ好きだったので、今回もアルバムに入れました。

●「叶わないなら 〜winter lovers〜」はウィンター・ソングですね。
上木:これは歌い上げ系の曲の中では、歌っていてすごく気持ち良くて、歌が自然に体の中に入ってきた曲です。私は女の子の気持ちしか分からないですけど、やっぱり12月24日に1人でいるのはキビしいと思うんです(苦笑)。カップルの人にとってはその時期が待ち遠しいと思いますけど、独り身の人にとっては辛い日になると思うので、それを歌詞にしました。

●「星の降る夜には」は今までのものとはガラッと違うタイプの曲ですが、これはどういう所に惹かれて選ばれたんでしょうか?
上木:この曲は“何でアルバム曲!?”って言っちゃう位、気に入っていたんです。でも、自分の中で気に入った曲に出会った時は、溜め込んでおくんじゃなくて、次にもっとお気に入りのものを作る様にしよう、というスタンスでやっていく事にしたので、この曲もアルバムに入れる事になりました。この曲はデモの段階から完成度が高くて、メロディ・ラインがいいなと思っていました。キーも私の音域にすごく合っていて、気持ち良く歌い上げられる感じだったんです。気に入っている分、色々したくなってコーラスもたくさん入れました。このアルバムを出す時期も秋なので、曲の感じも季節的にちょうど良いかなって。

●この曲の歌詞は、曲のイメージに近付けて書かれたのでしょうか?
上木:そういう訳ではなかったです。恋とか愛とかじゃない角度から歌詞を書きたいという気持ちがあったので、自分の人生みたいな事になぞらえて書いてみました。内容についてすごくこだわっていたという訳じゃないんですけど、この時は特にそういう気分だったんでしょうね。半年以上前からあった曲で歌詞もスラッと書けました。

●ボーナス・トラックの「A constellation 〜2007」はストリングス・ヴァージョンで収録されていますね。
上木:これは私が初めて歌詞を書いて、ライヴで1番最初に歌った曲で、すごく大切な曲なんです。だから昔から絶対にオーケストラ・ヴァ−ジョンでやりたいと思っていました。それをどのタイミングで発表するかは決めてなかったんですけど、今回の2ndアルバムも大切な作品だと思っているので、今年上木彩矢を知ったという人にも、この曲を聴いてもらいたいと思って収録しようという事になりました。オーケストラだとすごく豪華な感じになるので、今回はストリングス・ヴァージョンにしてみました。

●聴いてみてどうでしたか?
上木:私がやりたいと思っていた事が実現したので、大満足しています。インディーズ時代に発表した作品は少しでしたけど、今は1stアルバムを出して、今度は2ndアルバムまで出せる様になって……。これは私自身の成長を追ったものになると思うので、そこに自分にとって大切な曲をヴァ−ジョンが違っても、その都度形に残していけたら、10年後とかに振り返っても、これがきっと足跡として残っていくと思ったので、敢えてボーナス・トラックに入れました。

●前作の『Secret Code』は上木さんとリスナーを繋ぐ作品という事で、タイトルも内容もテーマがしっかりしたアルバムでしたが、今回の『明日のために 〜Forever More〜』はどういう作品になったと思いますか?
上木:繋ぐのは去年、今年は繋がった人達と前に進んで行こうという感じですね。それは自分自身にも当てはまる事でもあります。アルバム・タイトルの『明日のために 〜Forever More〜』はシングル曲のタイトルからきていますけど、“明日のために”という言葉自体もすごく深いと思っているんです。だから『Secret Code』で繋がった人達とみんなで“明日のために”進んで行きたいです。もちろん私が先頭で……(笑)

●その先頭を進んで行くものの1つが、ワンマン・ライヴですね。
上木:今年は名古屋公演も増えて、嬉しいです。名古屋でのライヴは初めてなので緊張しますけど、楽しみですね。これからも少しずつライヴが出来る場所を増やしていけたらいいなと思っています。1度のライヴで会える人達の数も増えて、すごく嬉しいです。早く皆さんと会いたいです!! 今年のライヴでは見に来てくれた皆さんともっと近くで触れ合えたり、言葉を交わせたり、一緒に歌ったりと出来たらいいですね。去年出来なかった事を、今年はやりたいなと思っています。


上木彩矢

New Album
『明日のために 〜Forever More〜』

2007.10.10 Release


GIZA studio
【初回限定盤】DVD付 GZCA-5119
¥3,059(tax in)
【通常盤】GZCA-5120 ¥2,800(tax in)