倉木麻衣

New Album
『ONE LIFE』

2008.1.1 Release


1月1日。2008年という新しい年がスタートする日に、倉木麻衣のニュー・アルバム『ONE LIFE』がリリースされた。今作はオリジナル・アルバムとしては約1年半振りの作品。その間の彼女の音楽活動の広がりには目を見張るものがあり、それらを通して得た多くの経験が倉木麻衣に大きな成長をもたらしたのは言うまでもない。今までの作品でも、彼女はいつも楽曲と向き合って、その時の自分の想いを歌詞に綴ってきたが、今作はそれが更に深みを増し、リアルな彼女が投影されたものになっている。彼女にとって節目となるアルバムになったという今作について、詳しい話を聞いてみた。 (INTERVIEWED BY EMI MORI)

●前回の「Silent love 〜open my heart〜 / BE WITH U」の取材の時に、アルバム制作を行っている最中というお話でしたが、いつ頃から制作を始められたのでしょうか?
倉木麻衣(以下倉木):もともと、今年に入ってからアルバムを作りたいなという気持ちはありました。そこでどういうコンセプトにしようかという事を考えた時に、アジアでの活動での経験や、今までやってきた事を振り返りながら今後に活かしていける自分にとって節目になる様な作品にしようと思ったんです。それで6月位から選曲作業を始めて、今年の夏から本格的にレコーディングに入りました。ちなみに1曲目の「One Life」という曲が、最初にアルバムに収録される事が決まった曲です。この曲が中心になって、アルバムの中身が固まっていきました。

●前作『DIAMOND WAVE』とは違うものにしたいという思いもありましたか?
倉木:前作は色々なジャンルの音楽を取り入れて、結構アップ・テンポで、メッセージ的にもすごくポジティヴで前向きな内容のものを作っていたんですけど、今回は人の生き方をリアルに伝えられる様に1曲1曲にストーリーを持たせて作っていきました。音楽的な面で言うと、R&Bテイストを取り入れて作っていたので、グルーヴ感にこだわった形になっていると思います。

●選曲の段階で、自分の作りたいアルバムに近付いているという実感はありましたか?
倉木:今年に入ってから音楽の活動範囲が広がってアジアにまで足を運んだ事や、そこでの様々な人との出会いを通して、自分がどうあるべきかとか、自分の思いをどう伝えていったら良いのかというのは明確に見えて来た気がするんです。そういう事を今回のアルバムで表現出来たら良いなと思って作りました。今まではアルバム全体のバランスを考えながら曲を選んで行ったんですけど、今回は“今の自分が求めているサウンドを作りたい!”という思いが強かったので、直感で選んでいきました。パッと聴いて“この曲だったら自分が思っている事を表現して、みんなに届ける事が出来るかな”と思ったものを選んだので、今回は色々な作曲家さんの曲が入っています。

●それでは収録曲についてお話を伺いたいと思います。まず1曲目の「One Life」はアルバム・タイトル曲となりますが、この曲を最初に聴いた時はどういう印象を受けましたか?
倉木:この曲はオープニングからガツンときて、“これからに向けて頑張って行くぞ!”という意気込みを感じて、この曲からスタートしていこうと思いました。

●歌詞にもそういう気持ちが込められていますよね。
倉木:今まで生きてきて色々な経験をしてきた中で、自分が求めている環境とは違う所に行ってしまってそこで壁にぶち当ってしまう事って誰でもあると思うんです。そんな時でも“自分らしさ”を忘れないで、自分が望んだものを貫いていく事が大事だという事を歌詞にしました。これは、自分に対する応援メッセージ的な部分もあります(笑)

●今回のアルバム収録曲の歌詞は、自分に向けたものを通して聴いている人に伝わっていくというタイプのものが多いですよね。
倉木:曲によってイメージを膨らませてストーリーを組み立てていくものもあるんですけど、その中でも今までに生きて来た事を振り返りながら自分もこうしていこうという答えを見つけて、それを歌詞に出来たならなと思って書きました。

●「One Life」というタイトルはすごくインパクトがありますね。“my life”じゃない所に深さを感じました。
倉木:この言葉は本当にふとした瞬間に生まれました。家にいて“タイトルどうしようかな……”と思っていたんです。そこでどういうタイトルが今の自分の心情に合っているかなと考えながら、今までにやってきた音楽活動を振り返っていたら、“生き方を見つめなきゃ”と思ったんです。その時に“Life”という言葉が浮かびました。でもそこで“Life”だけだとすごく広い意味になってしまうから、“One”を付けようって……。“One”が付くと1つのものに集中して生きている姿が描けるんじゃないかなって思って“One Life”になりました。

●2曲目の「I Like it Like that」は新しい作曲家さんの作品ですね。
倉木: 倉木:この曲を最初に聴いた時、想いがクルクル回っている様な印象を受けました。R&Bテイストを取り入れた新鮮な楽曲だと感じたので、こういう曲にもトライしたいなと思って選びました。サウンド面でもグルーヴ感だったり、コーラスを取り入れてオケを作っていくという所にひかれてチャレンジした1曲です。

●今回の収録曲の中でも色気がある感じの曲ですよね。
倉木:吐息も入っていて、大人っぽいですよね(笑)。ポップだけど洋楽寄りの曲に仕上がっています。ウィスパー・ヴォイスを取り入れて、主人公のどうにもならない心情をコーラス等でも表現してみました。この歌詞は、今まで一緒にやってきたけど、このままだとお互いにダメになってしまうから、それぞれの道を歩んで行こうよ、という決心を歌った内容になっています。そんな心情をクルクル回っている様なリズムに乗せて、気持ちをリセットしながら前に進んで行く様な楽曲を作ってみました。面白い作品に仕上がったと思います。

●確かに行ったり来たりしている感じが曲にも表れていますよね。
倉木:だストレートに伝えるだけではなくて、葛藤する気持ちをサウンド面で表現しながら、歌詞では“これから前に進まなきゃ”という部分を書いているので、そこにギャップがあって面白いと思います。

●聴いている方も追い詰められている感じがするというか……。
倉木:そうですね。 “I Like it”って“いいね”という意味なんです。だから開き直っている部分や、自分に言い聞かせている部分もあったりするので、最後に向かうに従って“I Like it”という言葉がたくさん出て来るんです。

●最後も言い切る形でプツンと終わっていますよね。
倉木:あれは“もう決めた!”という事だったりするんです(笑)。意味の深い曲になりました。歌詞は、今までには描かなかった一生懸命人を愛しているけど不器用な感じ愛の形と、そこから大人の恋愛を求めて行くという部分を書いてみました。そのギャップを表現する為に、サウンド面でもこだわって行ったので、最終的にはすごく深みのある曲になったと思います。

●続いて「one for me」ですが、この曲も新しい作曲家さんの作品ですね。
倉木:はい。この曲は「冬のソナタ」の曲で有名なユ・ヘジュンさんが作られた曲です。韓国で行われた“2007 アジア・ソング・フェスティバル”に出席した時にユ・ヘジュンさんにお会いしたんですけど、そこで曲を書いて下さるというお話を頂きました。バラードだけど切なくて暖かみのある曲で、片思いの相手を振り返らせようとしている女の子の姿を描いてみました。最初はすごくシンプルでヴォーカル1本で歌ってみたりしたんですけど、主人公の一途な暖かい想いを伝えるにはどうしたらいいかという事になった時、男性のコーラスを入れてみようという話になったんです。男性ヴォ−カルが少し入るだけで、より歌詞の意味を引き立てる事が出来るというか……。それで今までの作品でも何度かお世話になっているマイケル・アフリックさんに参加してもらいました。

●歌う時に特に気を付けた事はありましたか?
倉木:曲の雰囲気がすごく可愛らしい感じだった事もあって、レコーディングの時にこの曲が“リトル・マーメイド”みたいだねっていう話になったんです。“リトル・マーメイド”って人魚の女の子が陸にいる王子様に恋をする話だから、そこも歌詞の世界観とリンクしていたので……。それでレコーディングの時も“アリエルの気持ちになって歌ってみよう”とか、そういう話はしましたね(笑)

●片思いとか相手を振り向かせるという意味では、確かに“リトル・マーメイド”の世界とリンクしていますね。
片思いってすごいパワーを持っていますよね。歌詞の中にもあるんですけど、いつか必ずベンチに一緒に座って話をしてみたいとか、そういう一途な思いを書いてみました。 倉木:

●そして「Born to be Free」は、既にライヴで披露された曲でもありますね。
倉木:この曲は“A3 CHAMPIONS CUP”の公式テーマ・ソングで、まさにサッカーを盛り上げるという感じの曲ですね(笑)。アジアで音楽活動をしていく中で、音楽って本当に国境や言葉の壁を越えてみんなと1つになれるんだなという事を肌で感じたんです。それでそういう楽曲を作ってみたくて、選んだ1曲です。これも結構こだわって、最初に“Born to be Free”と言い切ってから、盛り上がっていく音作りだったり、最後の方に中国語の言葉を入れてみたりして、アジアのテイストを取り入れたサウンドにしています。サッカーの応援ソングって、キューバやブラジルとかの熱いサウンドのイメージがあると思うんですけど、それにアジアの音楽を取り入れるとどうなるのかなという事で、今回はチャレンジしてみました。

●「Born to be Free」というタイトルは、どうやって生まれたのでしょうか?
倉木:国境や言葉の壁を越えるというより、もっと広い意味でも人との繋がりを求めた様な意味を込めた言葉にしたいと思っていたんです。それで“音楽によって自由が生まれる”という意味で「Born to be Free」というタイトルを付けました。言葉自体が“B”から始まると、ボンと弾ける感じがして、爆破する様にも聞こえますよね。

※この続きは本誌にて…。


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